名取川埋もれ木と仙台埋木細工・・・

      二つはまったくの別物

  名取川で採れる埋もれ木と、青葉山の地中で採れる埋もれ木は別物

名取川埋れ木 名取埋木 
    名取川の埋もれ木(クリ材)          名取川の埋もれ木(クリ材)

 古歌に見える名取川埋もれ木

  名取川せせの埋れ木あらはれはいかにせむとか逢見そめけむ   古今集 よみ人しらず
  嘆かずよ今はた同じ名取川瀬瀬の埋もれ木朽ちはてぬとも    新古今 摂政太政大臣藤原良経 
  名取川春の日数はあらはれて花にそしつむ瀬瀬の埋れ木    続後撰  藤原定家朝臣
  みちのくにありてふ川の埋れ木のいつあらはれてうき名とりけん    続古今 源時清
  名取川瀬瀬にあるてふ埋れ木も淵にそしすつむ五月雨のころ    新後撰 従三位為継

 名取川の埋木灰

灰 灰 
       埋木灰 名取川産          (参考) 埋木灰 阿武隈川産
 埋木製品
 埋もれ木  埋もれ木
         文箱  名取川埋木製                  香箱  名取川埋木製

 埋もれ木 硯箱 名取川埋木製(復元 クリ材)
 埋もれ木 文箱 名取川埋木製(復元 クリ材)

文台 名取川埋木文台(復元 クリ材)
 伊達綱村・伊達吉村時代には、関白近衛氏へ名取川埋木文台を贈り、記念の歌会を催していた(大條伊達家資料)。この宴は元禄年間に開かれたことが判明している(松浦「埋もれ木に花が咲く」)。

 もう一つの「名取川埋もれ木」、そしてもう一つの「仙台埋木細工」
    滝沢馬琴所蔵の「名取川埋木枝折」と「名取川埋木化石硯」にヒント・・・

 青葉山の崖から竜ノ口峡谷へ剥がれ落ちた亜炭埋木片がやがて広瀬川や名取川まで流れ込む。この亜炭埋木は黒色で、目立つので、すぐそれと分かる。この流域の川原に多数見つけられる。青葉山の亜炭埋木はおよそ五百万年前に厚い火山灰に埋まった樹木であるという。川原の亜炭埋木は乾燥風化すると薄く剥がれる性質がある。この埋木で作った「しおり」は圧縮された年輪のために、木目が細やかで美しく、江戸の文人たちに贈られ、好評だった。「名取川埋木枝折」と呼ばれていた。江戸の著名な戯作者曲亭馬琴はこの「名取川埋木枝折」と「名取川埋木化石硯」を所有しており、文政7年(1824)11月に開催された「耽奇会」に出品した(「耽奇漫録」)。「埋木枝折」は文政3年(1820)春に仙台の女流作家只野真葛から贈られたもの、「埋木化石硯」は文化年間(1804)の初めに久保田藩士茂木巽から贈られたものであった。これらの亜炭埋木は川に流れ込む以前から「山埋木」であって、ただ単に川へ流れ込んだにすぎない。これに対し、中世に和歌に詠まれた名取川埋木は流木等が数百年~数千年川底に埋まり、埋もれ木になった純粋の川埋木である。まったく異質のものである。「名取川埋木枝折」は特別の美しい杢を有していた。全国どこにもない、素晴らしい杢のある枝折なのである。純粋の川埋木からは作ることが不可能な枝折なのである。だからこそ只野真葛は馬琴へ贈ったのである。贈られた馬琴がそのことを知っていたかどうかは分からない。

 青葉山産の埋木

  一方、仙台藩下級家臣の山下周吉などが青葉山の地下数メートルに眠る亜炭埋木を発見し、内職にそれを利用した「埋木細工」を始めたのは文政5年(1822)のことであった。この埋木細工は明治中期以降「仙台埋木細工」の名を確立するが、山の埋木を材料にしているのに、何故か当初のころは「名取川埋もれ木」の名称で販売されていた。そのいくつかの証拠が最近松浦丹次郎著「埋もれ木に花が咲く」で明らかになった。その理由は、同じ山埋木に起因する製品が既に「名取川埋木枝折」として先行して存在していたからであった。
 このようなことから、先行していた「名取川埋木枝折」は別系統の仙台埋木細工であるとも言えよう。

 仙台 仙台 亜炭埋木薄片(しおり用)・同試作埋木枝折 広瀬川産

仙台    仙台埋木細工 かいしき(復元)  
仙台埋もれ木盆  こうごう
   仙台埋木細工の茶盆「松島五大堂」 と香合

  青葉山の山埋木と竜ノ口沢・広瀬川の山埋木     これが仙台埋木細工の原材です。

 仙台 仙台 
    仙台埋木 青葉山産       仙台埋木(珪化木) 竜ノ口沢産

 仙台  仙台 
  仙台埋木(珪化木・亜炭) 竜ノ口沢産       仙台埋木(珪化木) 広瀬川産

 埋もれ木  仙台  
      仙台埋木(亜炭) 広瀬川産        仙台埋木(亜炭) 広瀬川産



 ※参考 松浦丹次郎著 「埋もれ木に花が咲く ~名取川埋もれ木と仙台埋木細工~」  2016年11月25日刊  380頁  1,800円 税別
     本 

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