ふくしま伊達の昔話

   絵本『伊達の桃太郎』の原文を見てみよう!

  これまでにないストーリー、ちょっと変わった福島の桃太郎

  武器を持たないモモタロウ、キジ・サル・イヌと、鬼が島へ鬼退治

  「伊達の桃太郎」は優しくて、気前がいい!

   伊達の地に、300年前の昔話が古書の中に残っていた! 

   ぜひ、その300年前の原文に触れてみよう。 

   ここでは、その300年前の物語の原文を鑑賞してみたいと思います。 

「伊達の桃太郎」は今からおよそ三百年前に伊達郡保原地方で語られていた昔話です。この昔話「伊達の桃太郎」の原典は「紀桃奴事」(熊阪台州編著『含とう紀事』所収、寛政4年(1792)刊)です。原典は全て漢文です。「紀桃奴事」は、当時この地方で語られていた昔話「桃太郎」を漢文表記にしたものです。

  桃奴 
 むかしむかしのことです。お爺さんとお婆さんが住んでいました。二人ともたいへん腰が曲がっていました。農業と養蚕で暮らしていました。お爺さんは今年八十歳になったばかりで、お婆さんも七十歳ほどになりました。二人は後々のことが心配でたまりません。お爺さんとお婆さんはある夜同じ夢をみました。羽衣をまとった一人の仙人が中庭に舞い降りて、言いました。

桃奴 
 「お前たちを長生きさせ、お前たちに良き赤児をくれてやろう」 そして仙人は小さな小箱を授けました。「これから12年したら、この子はきっと鬼の国へ行くだろう。この箱の中に、或るものがはいっている。これで賊をやっつけることができよう」と、仙人が言ったところで、夢が覚めました。ここで二人はお互いを見て、怪しいと思いました。翌日の朝、お婆さんが枕を片付けようとしたら、夢に見た小箱がありました。いよいよますますこれは怪しいと思いました。すでにお爺さんは田ん圃に行きました。お婆さんは小川へ真綿かけ(川水の中で繭を開け広げて真綿にすること)に行きました。するとたちまち一個の大きな桃が流れに浮いて近づいて来るのが見えました。それを手に取ってみると、それはそれは大きな桃でまるで瓜のようでした。お婆さんは怪しいと思いながらも、桃を持ち帰り、お爺さんに見せました。そして桃を剥いて、半分ほど食べましたところ、それはそれはその味は冷たくて美味しいもので、人間世界にはあるまじきものに思えました。

桃奴 
  ここにおいて、お爺さんは曲がった腰が伸び、お婆さんは髪の毛が雲のようにふさふさとなりました。二人は各々若くて美しい夫婦になりました。始めから終わりまで、お互いを見てその姿を怪しみました。互いに見合い、喜びました。何もかも無くして妻は身ごもり、待望の男子が生まれました。桃を食べたことにより生まれたので、桃太郎と名付けました。桃太郎は五歳で力持ちになり、火鉢を前髪に届くほどに持ち上げました。力は絶倫でした。近所の悪がきどもと相撲をとると、桃太郎の右に出るものいません。かつて牛と闘い、放り投げて角を折ったことがありました。村中の者がみんな桃太郎の力を称賛しました。

 一般に普及している「桃太郎話」では、桃太郎は桃の中から生まれ出ます。そして腰に刀を差した武者姿で鬼退治へ向かいます。しかし、「伊達の桃太郎」は、桃を食べたお爺さんとお婆さんが突然若返り、生まれた赤ん坊が桃太郎として成長していきます。そして鬼退治には武器を持たずに行きます。猿とキジと犬をお供にして鬼たちから財宝を奪って来るのは同じですが、「伊達の桃太郎」は特に気前よく、お供の猿たちにはキビ団子を5個6個ずつあげます。全国にある桃太郎昔話のなかで、伊達の桃太郎は日本一気前がいいのです。他に、鬼たちが海水を飲んで桃たろうたちの舟を引き寄せるシーンや「仙人」、「赤い色のしゃもじ」などが登場し、普及本にはない工夫が見られます。

以下、原文のみ掲載します。皆さん、ぜひ解読にチャレンジしてみてください。

桃奴 

桃奴 

桃奴 

桃奴 

桃奴 

桃奴 

  なお、福島大学名誉教授大久保隆郎先生の「台州の「紀桃奴事」について」という論考が『言文』47号(2000年1月)に掲載されています。たいへん素晴らしいご研究です。浅学な私はそのことに気づかず、「伊達の桃太郎」に活かすことができませんでした。穴に入りたい気持です。

伊達の桃の歴史
土龍舎の本

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