ひっそりと名取川の石川原に横たわっていた埋もれ木
その埋もれ木は表面の泥が乾いて、白っぽい色をしていました。端っこをノコギリで伐ってみると、黒紫色でした。内部は水分を含んでいて、しっとりしています。ノコギリ屑もしっとり濡れています。これは、まさしく、「二千年もの」の埋もれ木の色です。特上クラスの埋もれ木です。外側はひび割れだらけで、中は空洞ですが、質はたいへん良いようです。クリの木のようです。よくぞ腐らずに生き残ってくれたものです。長い間浅瀬で水流に削られた痕があちこちにあります。また長い間深い淵に沈んで鉄分や泥を吸収し、黒色化したと考えられます。
この埋もれ木は長さ約8mくらいあります。太さは直径50cm以上。これを運ぶには50cmくらいに切断しなければ、独りで運ぶことはできません。
恐らくこの場所に数年前からあったのだと思います。魚釣りの方などは目にされていたかもしれません。しかし、埋もれ木と気付く人はいなかったのだと思います。
名取川埋もれ木の発見場所
百年ぶりの発見か!
名取川埋もれ木は江戸時代に仙台藩が独占し、採集し尽した感があり、すでに百年前の大正3年「仙台藩祖時代実業一班」に、発見がほとんど皆無と記されています。今回の発見は百年ぶりの快挙になるのかもしれません。運んだ埋もれ木は原木の一部を仙台市の資料館などへ寄贈したいと思っています。
埋もれ木もいろいろあって、水中から一旦川原へ押し出されて乾燥しますと、ひび割れが進行します。ひび割れが深く内部まで進むと材木としては利用価値がなくなります。また川原へ置かれると腐食も進みます。多くの埋もれ木は水中に沈んだり(砂利や泥の中に埋まるのも同じ)、川原へ上がったりの繰返しであろうと思われます。こういう埋もれ木は質はあまり良くありません。これに対し水中や砂利に沈みっぱなしの埋もれ木は割れや腐れがほとんどなく、最良の埋もれ木と言えます。こういう埋もれ木はずっしりと重たいのが常です。鉄分をいっぱい吸収しているからです。乾燥した材は磨くと黒く艶がでます。粘っこくもあります。こういう感じの埋もれ木を私は「ねっとり埋もれ木」と呼んでいます。手にもよく馴染みます。質の悪い埋もれ木は軽く、艶はないし、手に馴染みません。
伐り口の色は黒ムラサキ色
丸太の断面 数ヶ月後の丸太断面(ひび割れが進行する)
出来上がったペン立てとカスタネットは紙やすりで磨きました。つるつるです。良質の埋もれ木は艶が出ます。この作品には少しのひび割れと虫食いがありますが、気になりません。なかなか、良いです。上品な風情があり、男性的な貫禄もあります。ずっしり重たいです。
香合1 香合2
文箱 香箱
★参考
「埋もれ木に花が咲く~名取川の埋もれ木と仙台埋木細工~」
名取川の埋もれ木と伊達氏
名取川の埋もれ木と仙台埋木細工
仙台埋木細工の歴史
阿武隈川の埋もれ木