平成26年5月、阿武隈川の中島の川原を散歩していたら、埋もれ木のクズや流木の類いのものがあちこちにあった。それから中島を一周した。すると岸から3mくらいの川中に埋もれ木らしきものが顔を出していた。水面から出ている部分は白っぽく見えたが、それは泥が乾燥した色だった。先っちょをノコギリで切ってみると、断面は真っ黒だった。最良質の埋もれ木だった。切り口の美しさは特上だ。この色ならおよそ千年くらいは埋もれていたと思われる。長さは5mくらい、太さは20cmくらいか。運び出すにもちょうど良い太さだった。
阿武隈川の川面に顔を出した「埋もれ木」 埋没年数は2000年くらいか? 材はナラと思われる。
まるで魚のようにも見える。トビウオ? 阿武っしー ???
長さ30cmほどを切り取り、自宅へ運んだころ、切り口は乾燥して、紫色に変化していた。綺麗なムラサキ色であった。材はしっかりしている。埋もれ木の最高級は「ねっとりとした艶のある黒いもの」だ。この材はそれに近い。これなら、いい細工ものが出来そうだ。
25日後の乾燥状況 水分が抜けて、しっかりした材になりつつある。
これで、厚手の箱物を造ってみたい・・・。
3cmほどの厚さに板を挽いた場合は、ほとんど反りや捩れが進行しないことが分かる。埋もれ木は川から引き揚げたらすぐ厚みに製材しておく方がお徳である。何せまだ材が軟らかく、ノコギリの歯が痛まないし、軽い力で伐ることができるからである。
ロープを使って埋もれ木を岸へ引き寄せる。まるで捕らえられた巨大な怪魚のよう。
五分割に解体切断して運びやすくする。
川原の長い砂原をひたすら曳き運ぶ。一本は30kgほどある。そして高い堤防の上まで運ぶ。急坂を登るのはきつく、何度も休憩。
運び終えた埋もれ木
すべてを 9m 12mm 15mmなどの厚さに挽いた。長さは70-90cm。
急な乾燥を抑えるため新聞紙で包んだものもある。
この2枚は柾目の薄板で、反りや捩れがほとんど進まなかった。
薄めに挽いた板目の板材は湾曲に反ったものが多かった。
ひび割れは放射組織に沿って発達しています。また放射組織が断層的にズレている箇所が見える。
とりあえず、カスタネットを作ってみました。良い音が出ます。
また、ペン皿らしきものも作ってみました。色はしっとりとした黒色、ねっとりとした黒色。これは最高級の色です。このような材はめったに採れません。
しばらくしてから、今度は待望の箱が出来あがりました。用途は雑物入れでしょうか。30cmほどの大きさですが、厚めの板を使用したので、かなり重たいです。そのあと小型の箱を二つ作りました。どちらも実にいい色合いです。素晴らしい出来です。大切なものを入れておきたい玉手箱になりそうです。小さい方は香合にしたいです。
また、小型のペン立ても作ってみました。
丸太のサンプルとして一つだけ残しました。水面から出ていた部分です。
阿武隈川の埋もれ木
名取川の埋もれ木、発見
伊達政宗と香
仙台埋もれ木細工と仙台藩士
◆(参考) 『埋もれ木に花が咲く~名取川埋もれ木と仙台埋木細工~』(松浦丹次郎著 土龍舎、2016年11月刊)
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伊達の香りを楽しむ会